このブログを一番やりたかった理由、そして、今やる必要があるのかな、と思った理由、それは10年前に自分が50回にわたって述べていたコラム「How To Become Balloons Artist」を読み返して、今このコラムを世に出していれば、どのような反響があったのかな、と思ったからである。
10年たって、バルーン業界は大きく変化し、成長した。インターネットの技術も大きく進歩した。
私は30台という、一番人生で大事な時期を、すべて風船にささげた、といっても過言ではない。10年風船屋をやってきて、今振り返る時期なのではないかな、と思い、このブログを立ち上げた。
20台の自分って、こんな生意気なことを言っていたのか…と思い返しながら、このブログを読んでいただければ幸いと思う。
手始めに、2000年5月30日のブログから…
バルーンビジネス、といっても、一口にいろいろなものがある。バルーンパフォーマー、バルーンデコレーター、バルーンデザイナー、そしてバルーンアーティストである。そしてそれぞれ共通することはあっても、求められるものはそれぞれに違う。
まずバルーンデコレーターである。デコレーターという言葉自体、あまり聞きなれない言葉である。日本語に訳せば、「装飾士」となる。これに求められるものは、「お客様のニーズに的確に答える能力」であろう。つまるところお客様の求めるものを形に表現する力が、デコレーターには求められる。CBA(Certified Balloons Artist)という資格があるが、これは「お客様の求めているものを的確に作る力」が求められている。言い換えれば「売れる作品」を作る能力が必要である。風船をビジネスとして捕らえる人には、デコレーターになるべきである。
続いてバルーンパフォーマーである。これに求められるものは、「人を楽しませる能力」である。言い換えれば、「役者としての力」であろうか。どんなにつらくても笑顔で振舞う・・・まさに「ピエロ」である。当然「ネアカ」でなくては勤まらない。人を楽しませることが自分の喜びである、と考える人にとっては、バルーンパフォーマーは最適かもしれない。
この二つは比較的芸術的要素が少ない。芸術的要素、というのは早い話がセンスの問題であり、多少でもそれがある人は磨くことによっていくらでも伸びる。逆にこの二つは芸術的センスが比較的重要な要素でないがゆえに、別の能力が求められている。デコレーターにもとめられているのはビジネス的要素である。またパフォーマーに求められているのはビジネス的センスもさることながら、どんなつらいときでも明るく振舞う忍耐力と明朗さ、であろう。これらの能力はセンスというより、努力して身に付けるものである。努力して身に付ける、ということは、風船が本当に好きで、やる気があれば誰でもなることができるのである。
問題は残りの二つ、バルーンアーティストとバルーンデザイナーである。アーティスト、とは早い話が「芸術家」である。芸術性の高いものを作るのがアーティストの仕事である。当然芸術的センスが必要となる。芸術的センス、というよりはイメージ能力、といったほうがいいかもしれない。自分のイメージしたものをいかにして形にするか・・・。そうなれば自分の形にしたいものを少なくとも鉛筆(ペン類でもよい)でラフスケッチするぐらいのことは必要になる。場合によってはデッサン力も必要になる。
もっと難しいのがバルーンデザイナーで、これにはデコレーターとアーティストの両方の素質が必要になってくる。それだけではだめで、それらを融合させる能力、すなわち総合力が必要になってくる。デコレーターとアーティストの両方の素質を兼ね備えていても、デザイナーには必ずしもなれない。それだけこの両者を融合させる総合力、といったものが重要になってくる。この総合力、といったものは並大抵の努力では身につかない。さらにはパフォーマーの要素も必要になってくる。逆にいえば、真に「バルーンデザイナー」といえる人こそ、風船の世界を極めることができるのである。
このように、バルーンビジネスの世界にも、いくつかの分類があるので、自分が本当に何になりたいのかを見極める必要がある。そして求められているのがそれぞれ違うので、それに応じた努力が必要になってくる。
私自身は、バルーンアーティストであり、バルーンパフォーマーである。自分自身ものすごくハイテンションであり、人の笑顔を見ると自分が幸せになる、そんな人なので、今のところは何とかやっていける。しかし、バルーンデザイナーにはなりきっていない。
ここまで書いているうちに、あることに気が付いた。バルーンビジネスに踏み出す大前提は、「人を喜ばせることが大好き」であることではないか。風船そのものがハッピーなアイテムである。当然それに接する人は、気持ちも常にハッピーでなければならない。どんなにつらいことが合っても、笑顔で振舞う程度のことは必要である。そうなると、パフォーマーとしての能力が、すべての分野に共通する基礎的な力の一部になるのではないか。
あと、これはどの分野にも言えることであるが、すべてに共通する技術、それは「基礎力」である。基礎力といえば、早い話が「一定のものを的確に作る力」である。言い換えれば、風船を正確に膨らませて、クラスターやガーランド、アーチなど基本的な形を作ることである。これがすべての基本になるのは言うまでもない。
私はプロを目指す人にはこの「基礎」しか教えない。基礎ができればその人の努力によって、いかようにでも発展させることができる。応用はいくらでも利く、それがバルーンビジネスの楽しさでもある。基礎さえ身につけたら、後は各自が進む方向へ向かって、各自で努力を積み重ねるのみである。(2000年5月30日)